トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅DALIのスピーカー/TOWERは文句無しの完成度

DALIのスピーカー/TOWERは文句無しの完成度



 どんな形でご縁が生まれるか分かりません


 以下のような内容のメールを最初に頂いたのですが、車の情報を得る為の検索からオーディオにつながったという大変珍しいお話です。インターネットというのは本当に網の目のようにどこかで繋がっているのですね。

 双方にとって都合の良い時間を見つけるのに随分と掛かった今回のクリニックでした。マルチプレーヤー、アンプ、スピーカーの3点で構成されたシンプルなシステムです。こんな時はケーブルやインシュレーターの能力がハッキリと現われ易くデーター取りには大変役立ちます。


 ----- Original Message -----
 From: "T.T"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Tuesday, February 14, 2006 3:53 PM
 Subject: 貸し出し試聴のお願い

 カイザーサウンド
 貝崎様

 こんにちは、御社のweb pageを拝見し初めてご連絡させて頂くT.Tと申します。宜しくお願い致します。

 さて標記の件、御社製品の「PB-BABY(ECO)U」をスピーカのスパイク受けとして、合計8個、導入を検討致しております。その際、ご親切にも事前に製品(作品)を試す機会を頂戴できるとの事でこの度一筆させて頂きました。

 小生大した機材ではありませんので、お恥ずかしい限りですが、折角縁があって手許に揃った機器の性能を最大限生かしたく、少々お話をさせて頂きます。ご多忙中恐縮ですが、お付き合い頂ければ幸いです。

 昨年は図らずも、高校の時購入した機器を総て入換えるに至ってしまい、現在下記の構成となっております。

 *環境: 鉄骨鉄筋コンクリートのマンション主にSACDのクラシック・ジャズを視聴
 *SP : DALI Royal Tower
 浮床構造のフローリング床に約40mm厚のアサダ桜無垢板(現状無塗装)を敷き、TAOCの安価なステンレス製スパイク受けを介し設置。本体側は標準装着のスパイクを使用。
 *AMP : Marantz PM-14SA v2
 *CDP : Marantz DV9500

 今回スパイク受けを入替えるにあたって、特性として低音に締まりのない、現状の鳴り方を改善できないか、という狙いがございます。

 豊かながらも、ただでさえモサっと拡がる傾向のSPに対し、建物の構造も影響し、相対的に低音が出すぎている感じなのです。最近「上半身」の弦や人の声が美しく感じられるようになったため、尚更「下半身」に違和感を覚えます。

 スパイクの受け皿として、複数の木片を試し、その結果に疲れていた折、諦めて購入した製品が、意外と善い結果をもたらせてくれた事もあり、TAOC社の製品を信用し、昨日まで「PTS-A」を購入するつもりでおりました。

 実は貝崎様を知るに至ったのは、昨日「Xantia」に関するweb検索をかけていた折、貝崎さんと小林章太郎さんとのやりとりを見付けた事がきっかけなのです。

 小生も昨年、ひょんな拍子でXantiaを所有するに至りまして、どっぷりとその世界にハマってしまいました。(余談ですがその前はalfaのgtvとBMWの740iや328ci等を経験してます。)

 そんなこともあり、可笑しいと思われてしまうかとは存じますが、勝手ながら貝崎様を信じてみようと感じた次第です。

 本来でしたら自己責任で、先ずは製品を購入すべきなのですが、もし可能でしたら、貝崎様のご厚意に甘えさせて頂きたく存じます。お取引に関わる詳細な条件をご連絡頂きますようお願い致します。

 T.T


 ----- Original Message -----
 
From: <info@rosenkranz-jp.com>
 
To: <T.T>
 
Sent: Tuesday, February 14, 2006 4:59 PM
 
Subject: Re: 貸し出し試聴のお願い

 T.T様

 初めまして、貝崎と申します。
 XANTIAから当社のインシュレーターにご興味を持たれたとはちょっと変わった形のご縁ですね。ローゼンクランツのインシュレーターは良いですよ。是非ご試聴なさってみてください。往復の送料のみご負担下さい。

 '93式で古いですが、一度私のXMに乗ってみてください。素晴らしい音楽と最高の走りです。リラクゼーションとアドレナリン満載です。

 一両日中にインシュレーターはお送り致します。

 
カイザーサウンド
 
貝崎静雄


 ----- Original Message -----
 From: "T.T"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Cc: <sengakuji@nifty.ne.jp>
 Sent: Sunday, February 19, 2006 9:53 PM
 Subject: 発送の御礼と注文のお願い

 貝崎様

 こんばんは、T.Tでございます。
 この度は早速商品をお送り頂きまして、誠にありがとうございました。本メールを頂戴する前、土曜日の昼間に確かに手許に届きましたこと遅ればせながらご連絡させて頂きます。

 可能であればそのまま購入させて頂きたいと考えておりましたので、新品をお送り頂き助かりました。ご配慮頂きありがとうございました。

 さて、素晴らしいものを手にした時は言葉にならないとよく言われますが、まさにその通りだと思いました。本日は更に、遂にSACD化された、お気に入りの演奏が手許に届いたこともあり、素敵な音楽に満たされた、大変充実した週末でありました。

 それに致しましても、貝崎様の「作品」には興味津々であります。ひとつ上のインシュレータは一体どのような音を奏でてくれるのだろう・・・と、欲が尽きることはありませんが、まずは「商い」という、基本的な信頼関係をここで一度築かせて頂きたく存じます。 

 その上で、もしお許し頂けるのであれば一度我が家にお越し頂き御指南を賜れれば幸いです。その時には是非XMにも乗せて頂ければ、とても嬉しいです。

 一つだけ、お話しさせてください。最初、取説を読まずに「E」マークを正面に、設置してしまいました。確かに弦の音が生々しくなったなぁと感じつつも、「?」はとれませんでした。 

 その夜、何気なく資料を拝見し、急ぎ再セッティングしてみますと...貝崎様をますます信用してみようと感じた瞬間でした。翌朝、その音楽が加速度的に良くなっており、本当に善いものがウチに来てくれたな、と感謝しております。

 T.T


 何もする事ないのでは・・・?!


 ごく一般的なマンションのリビングルームですが、普段あまりお目にかからない長手方向にスピーカーが置かれています。壁面には80インチと思われるサイズのスクリーンも吊り下げられてあるので、スピーカー間の間隔は当然広く、そんな関係もあってかスピーカーからソファーまでの距離が極端に近く感じます。

 さすがデンマーク製、さりげなく流れているバロック調の音楽が大変上質に感じます。これなら「何もする事ないのでは・・・?!」と思えるほどです。しかし、ボリュームを上げると色々とセッティングの問題点が見えてきました。それでもとっても可能性を感じる鳴り方をしています。

 今すぐにでもクリニックに取り掛かりたいのですが、T.Tさんの聞こえ方と私に聞こえる音の摺り合わせをする必要があります。多くのオーディオマニアは高性能な音を求める意識が強すぎるがあまり、シンプルに音楽を音楽として受け止める力が退化していっているように思えてなりません。

 しかし、彼に限っては音楽を正確に捉えているので、わずかなスピーカーの不自然な鳴り方も見逃さないのです。『低音部だけが遊離したように聞こえませんか?』。気にしなければ充分に楽しめる範疇にあります。これには驚きました。尋ねはしませんでしたが、部屋にピアノがあるということはおそらく弾くはずです。だから調律された楽器が奏でる自然な音とスピーカーで鳴らす音に違和感を覚えるのでしょう。


 桜の無垢木スピーカーベースを調整


 音が奥に向かって引っ張られているような鳴り方をしております。原因は幅広で分厚い桜の無垢木ベースにあるようです。自然素材というのは響きの方向性が工業製品に比べて強く、ポテンシャルの高い物ほど音の良し悪しに大きな影響を及ぼします。

 上下方向は良いのですが、左右とも前後方向が良くありません。木は根っこ側から幹の先の方に導管が発達していますので、響きの方向もそれと同じになります。従ってスピーカーの背面側からリスナーに向かう方向でなければなりません。ついでに説明しますと、年輪がかまぼこ型に見えるように置いてやれば木の外輪方向への成長と同じになり音に高さが出るようになります。


 スピーカーの位置調整


 前後の壁の距離が短いほど「カイザーウェーブ(音楽波反射パターン)」に乗せるスピーカーセッティングにごまかしが効きません。ほんの少しの違いが低・中・高の音のエネルギーバランスの違いとなって現われます。逆な言い方をすれば、音の変化の具合が大きいので判断がし易いとも言えます。

 右のスピーカーの前にはアップライトピアノがありますので、左右のスピーカーの辻褄合わせが必要になってきます。定規で測って同じに置いても上手くは行きません。こればっかりは耳で合わせるしかありませんので相当の熟練を要します。


 スピーカーケーブルSP-Basic1


 中高音と低音部の一体感がないのは、今使っている極細多線型スピーカーケーブルにも原因があります。ご本人もこの部分だけ古い時代の物だから買い替えするつもりでおられたようです。Basic1はカイザーサウンドの中では一番安いタイプになりますが、「カイザーゲージ」の考え方をそっくりそのまま設計に注入したモデルです。従いましてシステムコンディションが良ければ良いほど魅力ある音楽を奏でてくれます。音楽の血糖値を測るリファレンス的なケーブルです。この鳴り方を耳にしたT.Tさんにはもやもやしたものが吹っ切れた瞬間でもありました。


 インシュレーターの新製品PB-COUSINUをアンプにテスト


 音の輪郭の甘いところを是正するにはインシュレーターの出番です。COUSINは発売以来力強い音で好評を得てきたコストフォーバリューの高い製品です。この5月に6年ぶりのモデルチェンジとなって登場です。15,000円のREXWと比べてもそん色ないほど健闘する抜群の音楽表現能力が自慢です。特に単音楽器の響きの美しさには素晴らしいものがあります。4,000円X3個、12,000円の投資でこの変わりようは凄いですよ!。


 エンクロージャーの寸法は非の打ちどころなし


 両手の平を伸ばし親指を除いた4本指だけをコの字に曲げた状態で、DALIのTOWERの両側面を鼓を打つような要領で交互に速く打ちます。遠くに飛んで行くように音が素早く抜けて行きます。素晴らしく響きの美しいエンクロージャーです。瞬間に爆発収束が行なわれている証拠です。またスピーカーユニットの取り付け位置も完璧です。私が言うところの「鳴るように出来ている物は鳴る」の代表例です。

 このエンクロージャーを作った技術者は只者ではありません。良い音になる為の何かを掴んでいる事だけは確かです。この先沢山のメーカーからオファーがあるのではないでしょうか。翌日DALIのウェブを開き私流の方法で半日かけて徹底的に箱の寸法チェックをしてみました。

 ■TOWER H.845 W.170 D.220 T.22
この4つの数字が組み合わさった時点で全てが100点。合計では400点満点です。このリズム感とハーモニーは今まで私が手掛けてきた数え切れない数のスピーカーの中でNO.1です。Menuet2もW200もHelicon400も素晴らしいです。

 トールボーイ型のスピーカーはメーカーが変わろうと、ユニットが変わろうと、どれも一様な箱の音がするものです。特に真下に沈み込むような重たい感じの鳴り方は・・・。ですから私もそのように思い込んでいました。しかし今日限り思いは変わりました。トールボーイ型でも寸法比次第で美しい和音を作り出せる!。やり方次第では何とかなる!。


 研ぎ澄ました集中力でネジのトルク調整


 身体の芯からマグマのように突き上げてくる私のオーディオ魂が騒ぎます。最後のサービスで渾身のエネルギーを搾り出し、ネジのトルク調整をしました。ボリュームを乱暴に上げ下げしユニットが飛びそうになるほどスピーカーと箱を思い切ってシャッフルします。

 こうしてTOWERは更に生まれ変わりました。


 湾岸道路を素敵な音楽とともにクルージング


 この後シトロエン好きのT.Tさんに特別サービスです。ローゼンクランツのデモカーシトロエンXMを運転してもらい湾岸道路をクルージングです。隣に座った私はディスクジョッキー役を務めます。彼の音楽のテンポに合わせてのアクセルワークは素晴らしく私のXMをすぐに乗りこなしてしまったのです。リラクゼーションとアドレナリンが絶妙なバランスで車と人と音楽が一体となった夢のような躍動空間です。T.Tさんはこのベルトーネとカイザーサウンドの世界にすっかり虜になってしまったようです。



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